プレゼン用のスライドショーを、簡単にテキスト版で作り変えました。

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安心して妊娠・出産のできる神奈川県をめざして
全国の新生児医療の崩壊の阻止を目指した、特別NICU研修制度の設立

こども医療センター新生児科医師  豊島勝昭

●5月に当院NICUに視察していただいた時に知事に直接をお話を聞いていただきましたこども医療センターの豊島です。私はNICUで約10年間働いてきました。年々、神奈川県は、安心して妊娠・出産できる県ではなくなってきていると実感します。

●神奈川県の新生児医療の崩壊を阻止することを目指して短期有給研修医制度の創設を提案させていただきます。

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はじめに

●神奈川県は収容しきれないほど多くのNICUを必要とする新生児・妊婦患者が存在する。
●こども医療センターは増床予定ですが、増床に見合う医師確保の予定はない。
●こども医療センターでの研修を希望する他県からの希望者は多いが採用しきれていない。
●他県は専門医不足で長期間の研修派遣は困難。

こども医療センターに<期間・内容に柔軟性のある特別有給研修医制度>を増設して、<全国的に急務な新生児科医の養成と神奈川県の新生児医療の充実>を目指します。

●提案の要旨です。
●多くのNICUを必要とする新生児が神奈川県で誕生しますが、年間100件近く他県に救急搬送して新生児医療を御願いしています。
●本日,こども医療センターは、NICU病床を6床増床して頂きましたが,最大限に運用していきたい我々です。
●増床に伴うスタッフの大幅増員は困難だと聞いております。こども医療センターNICUでの研修を希望する医師は多いのですが採用するポストが足りない現状です。
●他県は小児科不足のため、長期間の研修派遣は困難になっている近年です。
●こども医療センターに<期間・内容に柔軟性を持たせた短期有給研修医制度>を創設し、<神奈川県の新生児医療の充実・強化>を提案します。

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早産児は全国的に年々増加
<グラフ>
2000年度
低出生体重児の出生率(%)  8.4
新生児死亡率(対1000出生)  1.8

1995年度
低出生体重児の出生率(%)  7.5
新生児死亡率(対1000出生)  2.2

1990年度
低出生体重児の出生率(%)  6.2
新生児死亡率(対1000出生)  2.7

1985年度
低出生体重児の出生率(%)  5.5
新生児死亡率(対1000出生)  3.4

1980年度
低出生体重児の出生率(%)  5.3
新生児死亡率(対1000出生)  4.9

NICU医療は新生児死亡を減少します。

●我が国の新生児死亡率と低出生体重児の出生率のグラフです。
●横軸が年度,黄色が低出生体重児の出生率,青が1000出生あたりの新生児死亡率です。
●少子化が叫ばれていますが,NICUに入院する早産児は全国的に増えていています。
●にも関わらず,新生児死亡率は年々低下しています。NICU医療は早産児を守り、新生児死亡を減少させる医療です。

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NICU医療

・様々な医療機器があってはじめて救命できる。
・病気ではなく、未熟!。成熟には時間が必要。
・長期間の集中治療と入院が必要。
・適切な医療が提供できないと様々な後遺症を生じうる。

NICU病床(高度医療のセット)は慢性的に不足。

●NICUは様々な医療機器があってはじめて早産児は救命できます。
●病気ではなく、未熟!なのが問題で,成熟には時間が必要です。
●長期間の集中治療と入院が必要です。
●適切な医療が提供できないと様々な後遺症を残すのが早産児です。
●NICU病床(高度医療のセット)は慢性的に不足している神奈川県です。

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NICUの日常

AM0:30 研修医達の日常(勉強中の写真)
AM2:30の帝王切開
AM3:00の入院
AM4:00の人工心肺開始

NICUは昼夜問わずのマンパワーが必要!
<専門性と労働条件>からNICUスタッフは慢性的に不足

●NICU病床や高度な医療機器があっても,運用できる小児科医,いわゆる新生児科医がいて,はじめてNICUは機能します。
●分娩・出産に朝も夜も,平日も休日もありません。年間100日前後は当直,自宅待機医として拘束のあるシフトを組み、24時間体制でNICUで職務を果たしている我々です。
●新生児科医は専門性が要求されるとともに,過重ともいえる労働状況で慢性的な多忙です。
●それでも,私の仲間達は、今この瞬間も目の前で生まれる、<か弱き生命>を救うためにNICUで日々働いています。

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NICUを必要とする児とご家族
<ベイスターズ村田修一選手と息子さんの写真>
・在胎24週、712gで出生
・県内収容先なく市民病院で出生
・1週間目に腸管が壊死!
・大量出血(ショック状態)
・静岡に転送の可能性もあった
・当院になんとか収容
・半年間の集中治療の末、退院。
・現在、2歳8ヶ月で元気に成長。

一人でも多くのお子さんをNICUに収容して救いたい

●今年もホームラン王になったベイスターズの村田選手の息子さんも重症の早産児でした。
●早産になりそうな時に主要NICUの収容先なく,小さなNICUで出生する状況でした。
●生後1週間で外科手術が必要な状態になりましたが、やはり転送先が見つからず,他県に転送の可能性もあったとのことです。当院になんとか収容,半年間の集中治療の末、退院されています。
●現在、このように元気に成長していますが,九死に一生と言える状況でした。

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神奈川県はNICUを必要とする児や家族が多い!
<颯くん(24週、750g、3歳)とご両親の写真>
<ひかりちゃん(25週、885g、1歳)とお父さんの写真>
神奈川県はNICUとする児やご家族が多い県です。
先日,村田選手にご招待されてNICU卒業生の児とご家族と野球観戦しました。我々は、このように1人でも多くNICUに収容して、児や御家族の<笑顔>を守りたいと願っています。

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神奈川県 慢性的なNICUベッド不足

県外への母体搬送
平成18年:約100件
平成19年:約70件
近隣の都道府県へ妊婦を救急搬送

収容先決定まで 120分以上:46%(平成18年)

出生数の多い神奈川県は<新生児医療過疎>
・周産期・新生児搬送システムは機能不全
・NICUを必要としている新生児は多い。

●神奈川県外への早産リスクの母体緊急搬送は平成18年:103件、平成19年:約70件でした。
●県外搬送患者の46%は、搬送先をみつけるまでに2時間以上かかっています。治療開始が遅れ、後遺症につながっている可能性も否定出来ません。「妊婦たらい回し報道」のような事態が生じてもおかしくない神奈川県の現状です。
●出生数の多い神奈川県は<新生児医療過疎>に思えます。 NICUを必要とする新生児が多すぎて,周産期・新生児搬送システムは機能不全をきたしています。
●でも,私は諦めていません。希望は残されています。

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神奈川県は NICU研修希望者も多い!

2008年
<研修に来ている先生達の写真>
福島県、秋田県、長崎県

神奈川県はNICU研修希望者も多い県です。
今年も福島・秋田・長崎・京都・埼玉などから新生児科医を目指す若者が当院に集まってくれています。

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全国主要NICU126施設の実態調査(毎日新聞2008年4月21日)
全国主要NICUの9割:母胎搬送を断った経験あり。

搬送を断らないための対策は?
病床を増やしたい・・76%

NICU増床が困難な理由は?
新生児科医の確保・・79%
看護師の確保・・75%
建設費の確保・・53%

新生児医療を崩壊させたいためには、新生児科医の育成が全国的にも急務!

●これは毎日新聞に掲載された全国主要NICU126施設のアンケート調査結果です。
●9割のNICUは入院を断った経験があるそうです。入院を断らないための対策としてはNICU増床が必要と76%の施設がお答えになっています。NICU増床の障害としては<新生児科医の不足>が一番の理由として上げられています。
●増床するだけではNICUは機能しない。。。新生児医療を崩壊させないためには新生児科医の育成が急務!と報道されました。

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こども医療センターのNICUスタッフ陣
<川滝先生、大山先生など>
<柴崎先生、星野先生など>の写真

●各人がサブスペシャリティーを有する新生児科医
●日本有数の経験豊富なスタッフ陣
→短期間でも新生児科医育成に貢献できるはず!

●指導者や担当患者数が少ないNICUでは,新生児科医の育成には時間がかかります。
●こども医療センターのNICUスタッフ陣は各人がサブスペシャリティーを有する新生児科医の集団です。診療実績は全国的に認知され、新生児科医を目指す小児科医の研修希望が多い施設と自負します。
●こども医療センターならば、短期間でも新生児科医育成には貢献できるはずです。

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短期有給NICU研修制度の提案

<柔軟性のある研修プログラム>
・原則6ヶ月の短期間研修
・期間・能力等に柔軟に対応可能な研修内容
・最大3名まで研修枠を確保。
   ↓
NICUの必要とする患者が多く、
経験豊かな新生児科医がいて、
やる気のある研修医が集まれば、

→神奈川県の新生児医療は活性化と充実!
 そして、新生児科医が育成できる!

そこで,短期有給研修医制度の提案させていただきます。

●<柔軟性のある研修プログラム>を構築して,原則6ヶ月(3-12ヶ月)の短期間研修を県内外を問わず、全国に向けて大募集します。期間・能力等に柔軟に対応可能な研修内容とすれば応募は必ずやあると考えております。
●NICUの必要とする患者が多い神奈川県、経験豊かな新生児科医がそろっている神奈川県に、やる気のある新生児科医を目指す若者が集まれば、教育の場になると共に、神奈川県の新生児医療は活性化と充実すると信じております。

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提案事業の目標

1.2年間で8人以上の研修医を受け入れ、育成。

2.こども医療センターの新生児医療体制を整備、向上させ、重症新生児の受入拡大とともに、神奈川県の週産期救急医療システムの充実を図る。

3. 都市部と地方の連携した新しい研修医制度のモデル県を目指す。

神奈川県に新生児医療を大切に考える医師に集まってもらい、よりよい新生児医療を展開する。
→未来の新生児医療の人材や技術を全国に発信する!

目標としては
●2年間で8名以上の研修医を受け入れます。
●育成する代わりに神奈川県のNICU医療に従事していただき,神奈川県NICUの多くの患者さんのために一緒に頑張って貰います。
●都市部と地方の連携した<新しい研修医制度のモデル県>を目指します。
●神奈川県に新生児医療を大切に考える医師に集まってもらい、よりよい新生児医療を展開します。そして、未来の新生児医療の人材や技術を全国に発信するつもりです。

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おわりに

・子供を大切に考えない国に未来はない!
・新生児医療を考える=日本の未来を考えること!

神奈川県の新生児医療を充実させ、<安心して妊娠・出産をできる神奈川県をめざして>提案事業を行います。

●こどもを大切に考えない国に未来はない。。。<新生児医療を考える>は<日本の未来を考える>こと。。。だとNICUで感じています。私はNICUで出会うこども達を介して未来を守るつもりで働いてきました。
●私は新生児医療を決して崩壊させない決意で,本日はこの場所にきました。
●神奈川県の新生児医療を充実させ,〈安心して妊娠・出産できる神奈川県をめざして〉提案事業を遂行する所存です。
●NICUを必要とする児やご家族を救うためには我々だけでは無理で、社会の皆様との適材適所の協力が必要です。
●未来の神奈川県を担うこども達のために一緒に出来ることを探してくださることを願っています。